トラブル回避の対応術

Qestion: 当社では、長時間労働抑制のため、今後1ヶ月につき数日を指定して残業は一切させず
全社員を定時退社させることを表明しました。
 これについて、一部の社員から顧客対応でやむを得ず仕事を自宅に持ち帰って行った場合は残業
と認めるかなどの質問が出ています。当社としては例外を設けないで実施したいので、この場合に
も残業の扱いにはしない方針ですが、問題はないでしょうか?

労働基準法の意義
労働基準法では、1日や1週の労働時間の上限を定め、これを超える場合は時間外労働の割増賃
金の支払いが必要であるとしています。
 ここでいう労働時間は、休憩時間を除いた実労働時間のことですが、労働時間そのものの意義は同
法では定めがなく、判例などの解釈として、労働時間とは使用者の指揮命令の下にある時間だとされ
ています。
 さらに、労働時間は、就業規則、労働協約または個別の労働契約などの定めの如何により決定され
るべきものではなく、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか
否かにより、客観的に定まるものであるとされています。
 したがって、残業については、上司の直接的な命令だけでなく、具体的に指示された仕事が所定の
労働時間内では出来ない程度の量である場合や、その日の業務の性質上、残業せざるを得ないような
状況である場合は、使用者の「暗黙の指示」がされていた残業であることとなります。
 つまり、就業規則などの規定や特別の社内ルールで、上司の承認がなければ残業を認めないなどと
決めていたとしても、個別かつ具体的に残業を中止させるような明確な指示命令がなければ、残業を
させていたことになってしまいます。そのためには、やはり終業時時刻を過ぎたら強制的に退社させ
る以外に方法はないといえるでしょう。

「持ち帰り」は残業になるか
会社側が、ある一定時刻に強制退社させるとなると、労働者はその日に処理すべき仕事ができなく
なった場合や、やむを得ず帰宅後の労働、いわゆる「持ち帰り残業」をすることがあるかもしれません。
 これについても労働時間にあたる使用者の指揮命令下にあるといえるのかどうか、判断が分かれる
ところではあります。上司から自宅に持ち帰ってでも仕事を終わらせるような指示、または直接では
なくとも、ノルマを課すような暗黙の指示がある状況であれば、自宅でも指揮命令下にある労働時間
とみなされる可能性は高くなります。
 しかし、仕事を自宅に持ち帰ることは、重要な書類や秘密にしておくべきデータを社外に持ち出す
ことにもなります。それを上司が容認または黙認することは情報の漏洩といったリスクを伴うので、
それを認めることは通常ではあり得ないことだと考えられます。
 長時間労働抑制のための強制的に退社させる措置を実施するには、こうした仕事の持ち帰りを厳格
に禁止することも重要だといえるでしょう。