平成23年度税制改正大綱は、法人については減税、特定の個人富裕層については増税といった内容となっています。通常国会も開会され本格的な法案の議論はこれからですが、今月は大綱を少し詳しく紹介します。

◎税務調査の事前通知を原則化
税務調査の事前通知について、調査手続の透明性と納税者の予見可能性を高める観点から、次のとおり明確化・法制化を図る。
原則として、税務調査を行う場合には、あらかじめ事前通知を行う。ただし、調査の相手方となる納税者等に関する情報、その納税者等が営む事業内容に関する情報その他税務当局の保有する情報に鑑み、税務署長等が次に掲げるおそれがあると認める場合は、事前通知を行わないこととする。
(ア)正確な事実の把握を困難にするおそれ
(イ)違法若しくは不当な行為を容易にし、又はその発見を困難にするおそれ
(ウ)その他国税(条約相手国の租税を含みます)に関する調査の適正な遂行に支障を及ぼすおそれ
また、上記の例外事由の具体例を通達に記載することとします。
(注)上記の改正は、平成24年1月1日以後に新たに納税者に対して開始する調査について適用。

◎更正の請求期間の延長(原則5年に統一)
法定外の手続により非公式に課税庁に対して税額の減額変更を求める「嘆願」という実務慣行を解消するとともに、納税者の救済と課税の適正化とのバランス、制度の簡素化を図る観点から、次のとおり、納税者が申告税額の減額を求めることができる「更正の請求」の期間を延長。
(ア)納税者が「更正の請求」を行うことができる期間(現行1年)を5年に延長。
(イ)併せて、課税庁が増額更正できる期間(現行3年のもの)を5年に延長。
これにより、基本的に、納税者による修正申告・更正の請求、課税庁による増額更正・減額更正の期間を全て一致させる。
(注)上記の改正は、平成23年4月1日以後に法定申告期限等が到来する国税について適用。また、今般の更正の請求に関する改正趣旨を踏まえ、過年分についても、運用上、増額更正の期間と合わせて、納税者からの請求を受けて減額更正を実施するよう努める。

◎更正の請求の範囲の拡大
1.当該申告時に選択した場合に限り適用が可能な「当初申告要件」がある措置について、次のとおり見直し、更正の請求範囲を拡大する。
現行、当初申告要件がある措置について、下記(ア)及び(イ)のいずれにも該当しない措置については、「当初申告要件」を廃止する(所要の書類の添付を求める)。
(ア)インセンティブ措置(例:設備投資に係る特別償却)
(イ)利用するかしないかで、有利にも不利にもなる操作可能な措置(例:各種引当金)
2.控除等の金額が当初申告の際に記載された金額に限定される「控除額の制限」がある措置について、更正の請求により、適正に計算された正当額まで当初申告時の控除額を増額させることができることとする。
(注)上記の改正は、平成23年4月1日以後に法定申告期限等が到来する国税について適用。

◎給与所得控除の上限設定
その年中の給与等の収入金額が1,500万円を超える場合の給与所得控除額については、245万円の上限を設けます。
(注)上記の改正は、平成24年分以後の所得税及び平成25年度分以後の個人住民税について適用。

◎役員給与等に係る給与所得控除の見直し
その年中の給与等のうち、給与等の支払者の役員等が、当該給与等の支払者から役員等の職務に対する対価として支払を受けるもの(以下「役員給与等」といいます。)の収入金額が2,000万円を超える場合の当該役員給与等に係る給与所得控除額については、次に掲げる場合の区分に応じそれぞれ次に定める金額とする。
(1)その年中の役員給与等の収入金額が2,000万円を超え2,500万円以下の場合
⇒245万円からその年中の役員給与等の収入金額のうち2,000万円を超える部分の金額の12%相当額を控除した金額
(2)その年中の役員給与等の収入金額が2,500万円を超え3,500万円以下の場合
⇒185万円
(3)その年中の役員給与等の収入金額が3,500万円を超え4,000万円以下の場合
⇒185万からその年中の役員給与等の収入金額のうち3,500万円を超える部分の金額の12%相当額を控除し
た金額
(4)その年中の役員給与等の収入金額が4,000万円を超える場合
⇒125万円
(注)「役員等」とは、次に掲げる者をいいます。
ア.法人税法第2条第15号に規定する役員
イ.国会議員及び地方議会議員
ウ.国家公務員(特別職に属する職員のうち一定の者又は一般職に属する職員のうち指定職に該当する者に限る。)
エ.地方公務員(上記3に準ずる者に限る。)
(注)上記の改正は、平成24年分以後の所得税及び平成25年度分以後の個人住民税について適用。

◎退職所得課税の見直し
(1)役員退職手当等に係る退職所得の課税方法の見直し
その年中の退職手当等のうち、退職手当等の支払者の役員等(役員等としての勤続年数が5年以下の者に限る)が当該退職手当等の支払者から役員等の勤続年数に対応するものとして支払を受けるものに係る退職所得の課税方法について、退職所得控除額を控除した残額の2分の1とする措置を廃止。
(注)「役員等」とは、次に掲げる者をいう。
ア.法人税法第2条第15号に規定する役員
イ.国会議員及び地方議会議員
ウ.国家公務員及び地方公務員
(2)退職所得に係る10%税額控除の見直し
退職所得に係る個人住民税の10%税額控除を廃止。
(注)上記の改正は、平成24年分以後の所得税について適用。個人住民税は、平成24年1月1日以後に支払われるべき退職手当等について適用。

◎成年扶養控除の対象の見直し
居住者が次に掲げる成年扶養親族(扶養親族のうち年齢23歳以上70歳未満の者、以下同じ。)を有する場合には、その居住者のその年分の総所得金額等からその成年扶養親族1人につき、38万円を控除する。
(1)特定成年扶養親族
(2)特定成年扶養親族以外の成年扶養親族(その年の合計所得金額が400万円以下である居住者の成年扶養親族に限る)
(注)「特定成年扶養親族」とは、成年扶養親族のうち、次に掲げる者。
ア.年齢65歳以上70歳未満の者
イ.心身の障害等の事情を抱える一定の者
ウ.勤労学生控除の対象となる学校等の学生、生徒等
所得500万円までは負担調整措置があり、また、住民税も同様とする。
(注)上記の改正は、平成24年分以後の所得税、平成25年度分以後の個人住民税について適用。

◎金融証券税制
上場株式等の配当等及び譲渡所得等に係る10%軽減税率(所得税7%、住民税3%)の適用期限を2年延長(平成25年12月31日まで)。

◎年金所得者の申告手続きの簡素化
(1)公的年金等の収入金額が400万円以下で、かつ、当該年金以外の他の所得の金額が20万円以下の者について、確定申告不要制度を創設。
(注)上記の改正は、平成23年分以後の所得税について適用。
(2)公的年金等に係る源泉徴収税額の計算について、控除対象とされる人的控除の範囲に寡婦(寡夫)控除を加える。
(注)上記の改正は、平成24年1月1日以後に支払われる公的年金等について適用。

◎租税回避防止措置
居住者が支払を受けた生命保険契約等に基づく一時金に係る一時所得の金額の計算上、その支払を受けた金額から控除することができる事業主が負担した保険料等は、給与所得に係る収入金額に算入された金額に限る旨を法令に規定する。
(注)上記の改正は、平成23年4月1日以後に支払われるべき生命保険契約等に基づく一時金について適用。

◎国民健康保険税措置
国民健康保険税の基礎課税額に係る課税限度額を51万円(現行50万円)、後期高齢者支援金等課税額に係る課税限度額を14万円(現行13万円)、介護納付金課税額に係る課税限度額を12万円(現行10万円)に引き上げ。

◎贈与税措置
暦年課税について、直系卑属(20歳以上)を受贈者とする場合の贈与税の税率構造を緩和。
相続時精算課税制度について、受贈者に20歳以上の孫を追加するとともに、贈与者の年齢要件を「65歳以上」から「60歳以上」に引き下げ。
(注)上記の改正は、原則として平成23年1月1日以後の贈与により取得する財産に係る贈与税について適用。

◎印紙税
不動産の譲渡に関する契約書等に係る印紙税の税率の特例措置の適用期限を2年延長。

◎法人実効税率5%下げ
わが国企業の国際競争力の向上や立地環境の改善等を図り、国内の投資拡大や雇用創出を促進するため、国税と地方税を合わせた法人実効税率を5%引き下げ〔40.69%→35.64%〕。
このため、法人税率を30%から25.5%へ4.5%引き下げる。
また、上記とは別に、中小法人に対する軽減税率を18%から15%へ3%引き下げる。
(注)上記の改正は、法人の平成23年4月1日以後に開始する事業年度について適用。

◎減価償却速度の見直し
減価償却制度について、平成23年4月1日以後に取得をする減価償却資産の定率法の償却率は、定額法の償却率(1/耐用年数)を2.0倍した数(現行2.5倍した数)とする。なお、改定償却率及び保証率についても所要の整備を行う(所得税についても同様とする。)。
(注1)定率法を採用している法人が、平成23年4月1日前に開始し、かつ、同日以後に終了する事業年度において、同日からその事業年度終了の日までの期間内に減価償却資産の取得をした場合には、現行の償却率による定率法により償却することができる経過措置を講じる。
(注2)現行の償却率による定率法を採用している減価償却資産について、平成23年4月1日以後最初に終了する事業年度の申告期限までに届出をすることにより、その償却率を改正後の償却率に変更した場合においても当初の耐用年数で償却を終了することができる経過措置を講じる。

◎欠損金の繰越控除制度
欠損金の繰越控除制度等について、次のとおり見直しを行います。
(1)青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除制度及び青色申告書を提出しなかった事業年度の災害による損失金の繰越控除制度における控除限度額について、その繰越控除をする事業年度のその繰越控除前の所得の金額の100分の80相当額とする。 但し、中小法人等については、現行の控除限度額を存置する。
(注1)上記の改正は、平成23年4月1日以後に開始する事業年度について適用。
(2)青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越期間、青色申告書を提出しなかった事業年度の災害による損失金の繰越期間及び連結欠損金の繰越期間を9年(現行7年)に延長。

◎貸倒引当金制度の縮減
貸倒引当金制度について、適用法人を銀行、保険会社その他これらに類する法人及び中小法人等に限定。なお、これらの法人以外の法人の平成23年度から平成25年度までの間に開始する各事業年度については、現行法による損金算入限度額に対して、平成23年度は4分の3、平成24年度は4分の2、平成25年度は4分の1の引当てを認める等の経過措置を講じる。また、公益法人等又は協同組合等の貸倒引当金の特例について、割増率を12%(現行16%)に引き下げた上、その適用期限を3年延長。

◎雇用促進税制の創設
青色申告書を提出する法人で公共職業安定所の長に雇用促進計画の届出を行ったものが、平成23年4月1日から平成26年3月31日までの間に開始する各事業年度において、当該事業年度末の従業員のうち雇用保険一般被保険者の数が前事業年度末に比して10%以上、かつ、5人以上(中小企業者等については2人以上)増加したこと等の公共職業安定所の長の確認を受けた場合には、一定の要件の下、当該事業年度の法人税額から、増加した雇用保険一般被保険者の数に20万円を乗じた金額を控除できる措置を講じる。
ただし、当期の法人税額の10%(中小企業者等については20%)を限度とする(所得税についても同様とする)。

◎アジア拠点化推進税制の創設
グローバル企業の研究開発拠点等の国内立地を促進するため、アジア拠点化推進制度に基づく企業認定を前提として、以下の税制優遇措置を講じます。
(1)グローバル企業の研究開発拠点等について、雇用創出や投資拡大に関する要件を満たす場合、20%の所得控除を認める(5年間)。
⇒法人実効税率引下げとあわせ、認定企業の税率は28.5%に
(2)海外の親会社が認定企業の取締役等に付与したストックオプションに対する課税をすべてキャピタルゲイン課税(20%)の対象とする特例を措置。
(参考)「総合特区制度(国際戦略総合特区)」の創設
国際戦略総合特区域内で地方公共団体の指定を受けた事業者に対し、特別償却、税額控除、又は5年間20%の所得控除を措置。

◎消費税の事業者免税点制度の不適用措置
消費税の事業者免税点制度における免税事業者の要件について、次の見直しを行います。
(1)個人事業者のその年又は法人のその事業年度につき現行制度において事業者免税点制度の適用を受ける事業者のうち、次に掲げる課税売上高が1千万円を超える事業者については、事業者免税点制度を適用しない。
ア.個人事業者のその年の前年1月1日から6月30日までの間の課税売上高
イ.法人のその事業年度の前事業年度(7月以下のものを除く)開始の日から6月間の課税売上高
ウ.法人のその事業年度の前事業年度が7月以下の場合で、その事業年度の前1年内に開始した前々事業年度があるときは、当該前々事業年度の開始の日から6月間の課税売上高(当該前々事業年度が5月以下の場合には、当該前々事業年度の課税売上高)
(2)アの適用に当たっては、事業者は、アの課税売上高の金額に代えて所得税法に規定する給与等の支払額の金額を用いることができることとする。
(注)上記の改正は、上記のその年又はその事業年度が平成24年10月1日以後に開始するものについて適用。

◎消費税95%ルールの厳格化
課税売上割合が95%以上の場合に課税仕入れ等の税額の全額を仕入税額控除できる消費税の制度については、その課税期間の課税売上高が5億円(その課税期間が1年に満たない場合には年換算)以下の事業者に限り適用する。
(注)上記の改正は、平成24年4月1日以後に開始する課税期間から適用。

◎外国税額控除制度の見直し
外国税額控除制度の適正化を図る観点から、次の見直しを行う。
ア.外国税額控除の対象から除外される高率な外国法人税の水準を、35%超(現行50%超)に引き下げ。
イ.控除限度額の計算の基礎となる国外所得から非課税国外所得の全額(現行3分の2)を除外。ただし、経過措置として、2年間は非課税国外所得の6分の5を除外。
ウ.控除限度額の計算の基礎となる国外所得の90%制限に係る特例は廃止。
(注)上記の改正は、平成23年4月1日以後に納付することとなる外国法人税及び外国所得税について適用。

詳しくは下記参照先をご覧ください。
参照ホームページ[財務省]
http://www.mof.go.jp/genan23/zei001.htm